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専門コラム 「週間ルーセント通信」 第15話 ビジネスアライアンス

用途開発を広げる手法の一つに、特定の業界で影響力を持つ企業と
アライアンスを組む方法があります。
さらに、その企業が市場で大きなシェアを持つ製品を持っていれば、
非常に効率的に用途開発を広げることができます。
それは、そのシェアのもとになる数多くのユーザー企業に対して、
自社の技術や製品を提案することができるからです。

アライアンスをうまく利用することがキーになります。
1つ、具体的にご紹介します。

私が以前、ある電源ICメーカーに勤務していたときの話です。
(少々込み入った話ですがご容赦願います)
パソコンでもデジカメでもスマホでも、一般に電子機器の中には、
複数の電源電圧が使われています。

バッテリーから出て来る電圧は一つでも、
たとえばメモリーが使う電圧とディスプレイが使う電圧は別物だし、
プロセッサは一つのチップでも複数の電源電圧を必要とします。

私が関わっていた電源ICは、このような電子機器に使うために、
1チップで複数の電源電圧を作るものでした。
当時マーケティングリサーチの結果として、
カーナビをターゲットすべき用途としました。
その背景は今回は書きませんが、当時成長が期待されていた分野でした。

この業界で最も影響力があるのは、カーナビそのものの性能を
大きく左右するメインのプロセッサーであり、
そのプロセッサーメーカーとして国内での実績が多かったのがR社でした。
そこで、このR社にアプローチし、紆余曲折の後に彼らのプロセッサの
評価ボードにこの電源ICを採用されることに成功しました。
R社とのアライアンスパートナーになったことになります。

これは、その後のマーケティングに大きな変化をもたらしました。
メインのプロセッサーのアライアンスパートナーになったおかげで、
そのプロセッサを使う多くのカーナビメーカーと容易に商談をすることが
出来るようになったのです。
しかも、R社が自社のプロセッサーの拡販のために評価ボードを配布すれば、
私が扱っていた電源ICも同時に配布されることになります。
非常に効率よく認知度を上げることができましたし、
その後の採用に至るケースも国内海外含め、多くありました。

それぞれのカーナビメーカーは、自社の設計思想にもとづいた
製品を作りますから、それに応じて電源ICの用途開発が
広がったことになります。
非常に成功したアライアンスの例でしょう。

逆に失敗した例もあります。
まだMP3プレイヤーが盛んだった頃、この製品分野に売り込もうと、
大手S社のMP3プレイヤーで使われているマイコンメーカーと
アライアンスをくんだことがあります。
この時も、アライアンス自体はうまく運びました。
が、ご存知のようにアップル社の製品のお陰で、ポータブルMP3プレイヤー
自体の市場が縮小してしまい、採用に動きかけていた
国内の家電メーカーも撤退を決めてしまう、という経験もあります。

いずれにしても、アライアンスを組むということは、
用途開発を広げようとする際には積極的に取り組む価値が
十分にあります。
ただし、業界で影響力を持つパートナーと組むこと、その業界の
トレンドを見誤らないこと、などに注意が必要です。

そしてこれも、テクニカルマーケティングの大きな役割の1つであり、
用途開発を拡大するやり方です。