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専門コラム 「週間ルーセント通信」 第58話 中小製造業の未来

用途開発誘起戦略を一言で言えば、技術の本質をわかりやすく見せて、
新たな用途開発を誘起させることです。

以前東京商工会議所と大学・専門学校が連携して「中小企業の底力・魅力発信
プロジェクト」という活動をしたことがあります。
これは各学校の学生が都内の中小企業を取材し、都内に約45万社あるとされる
中小企業が持つ技術や強みを世界に発信する、というものでした。
特にこの中小企業とは、中小製造業を意味しているようで、世界に誇れる
優れた技術やサービスを持つ企業が少なくないにも関わらず、その存在が
時代を担う若者に認識されていない。そこに光を当てたいというものでした。

私がこの記事を読んで感じたことが、2点あります。
もちろん、どちらもマーケティングの視点から見たポイントです。

1つ目は、このプロジェクトの意義です。
技術を学んでいる工学系の学生が、実際にものづくりの中核を担っている
中小製造業の企業に出向いて、現場を見、経営者や職人から話を聞く。
そして自分の中でそれらの情報を咀嚼して発信する、というのは
学生にとっては非常に意義があることと思います。

特に講義で学ぶだけでは、現場で一つ一つの部品や加工工程が全体の中で
どういう役割を持っているのかが見えにくいですから。
中小企業が持つ技術を点としてだけではなく、線としてあるいは面として
捉えること。それを正しく咀嚼できると、例えば全体の中の部品一つの
精度の大切さなどがわかるようになります。

これは実社会のものづくりに関わらないできない経験です。
学生の方々にはぜひ、表面的なことではなく技術の本質をみつけて発信して
もらいたいと思います。
また企業側でも、ある意味その技術の素人に対して、メリットをわかりやすく
説明するプロセスは、あらたな気づきがあるはずです。
そういった意味では、受け入れる企業側にもメリットが有るでしょう。

2つ目は、「時代を担う若者に認識されていないこと」に対する考えです。
世界に誇れる優れた技術があるにも関わらず正しく認識されていないのであれば、
それはマーケティング力が弱いといえます。
しかし、正しく認識してもらいたい相手は、第一義的にはその技術のユーザーや、
ユーザー予備軍の企業であるべきです。

もちろん大企業でマーケティングにかける人材も予算もふんだんにあるのであれば、
一般社会や学生向けに情報発信することも大切でしょう。
しかし、このプロジェクトの趣旨にある町工場のような中小製造業の場合は、
まずはユーザーや予備軍に対する情報発信にリソースを割くべきで、結果として
次世代を担う若者に認識されていない、という事態になっても仕方ないことと
思います。

むしろこのプロジェクトに積極的に参加するような意欲的な若者の方から、
これをきっかけにして、中小企業が持つ技術に興味をもって自ら深掘りして
いったり、就職先として検討するような動きになるのが、理想形でしょう。